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広島高等裁判所 昭和48年(ま)1号 決定

主文

請求人に対し金六六九万三、七〇〇円を交付する。

理由

本件請求の要旨は、請求人は同人に対する強盗殺人、窃盗被告事件について、強盗殺人の点につき昭和四七年一二月一四日広島高等裁判所で無罪の判決をうけ、これが確定したから、未決の抑留、拘禁による補償を請求する、というにある。

記録を調査すると、請求人は右被告事件につき、昭和三七年六月一五日山口地方裁判所で有罪の判決を受け、控訴を申立てたが、同四三年二月一四日広島高等裁判所で有罪の判決を受け、これに対し上告を申立てたところ、同四五年七月三一日最高裁判所で破棄差戻の判決があり、同四七年一二月一四日差戻後の広島高等裁判所で、強盗殺人の点につき無罪の判決があり、同月二九日確定したものであること、ならびに請求人は別件である住居侵入、窃盗未遂の被疑事実により、昭和三〇年一〇月一九日逮捕、同月二二日同事実により勾留され、(その後勾留更新を重ねたが、右勾留状は昭和三二年六月三〇日失効した)同三一年三月三〇日強殺事件で起訴され、同日右事実で勾留され、以来昭和四五年九月二二日保釈される迄五、四五三日身柄を抑留、拘禁されていたものであることが認められる。

右は刑事補償法一条一項により補償の請求をすることができる場合に該当することが明かであるところ、請求人は右拘束期間全部につき補償を請求している。しかし、請求人は同人に対する前記住居侵入、窃盗未遂につき、昭和三七年六月一五日(同月三〇日確定)、山口地方裁判所において懲役四月、未決勾留日数中一二〇日を本刑に算入するとの判決を受け、さらに別罪である窃盗事件につき昭和四七年一二月一四日(同月二九日確定)、広島高等裁判所で懲役六月の判決を受け(破棄判決によって法定通算となる)、右懲役四月(一二二日)と懲役六月(一八二日)合計一〇月(三〇四日)について、刑の執行または裁定もしくは法定通算による刑の執行と同一の処分を受けているのであるから、右期間は補償の対象とすべきではない(最高裁判所昭和三四年一〇月二九日決定参照)。なお、検察官は請求人の逮捕後、起訴迄の一三日は補償の対象とすべきでないというが、右逮捕、勾留の目的の中に本件強殺事件も含まれており、現に同事実についても取調をしているから、補償の対象とすべきものと認めるのが相当である。

以上のとおり、本件補償請求の対象となる抑留日数は五、四五三日から三〇四日を控除した五、一四九日である。

そこで、当裁判所は刑事補償法四条一、二項に則り、右抑留、拘禁日数に応じ、いずれも一日一、三〇〇円の割合により請求人に対し、主文に記載した金額の補償金を交付すべきものとする。

よって、同法一六条前段により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 牛尾守三 裁判官 村上保之助 一之瀬健)

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